副団長の苦悩。

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「戦場では雨も雷も関係ないわー!」 ワハハハハー!とよりテンション高く(雷に興奮したのだろう)訓練を続けようとする脳筋を宥め、訓練を中断させた。 訓練所は屋根のないだだっ広い広場である。 そんな所で剣やら槍を振り回してたら普通に雷に打たれる。 「そんなもの気合いと筋肉で跳ね返してやるわ!」 んなことデキルのはあんただけだから。 つーかホントにデキそうなのが怖い。 そんなことを思っていると本当に雷が落ちた。 ただし場所は訓練所の中ではなくさすがに両手の指で足りる数の見物人がいる柵の外に。 人が少なくて良かった。 雷は訓練所を取り囲む柵から少し離れた一本の樹に落ちた。 普段なら周りに大勢の見物人がいるあたりだが、その日はいなかった。皆、屋根のある訓練所脇のベンチに座っている。 ーーと、ほっとしかけたのだが。 「いかん!」 隣の脳筋が走り出す。 見れば件の樹の側に一人の少女が倒れている。 ハリムもまた慌てて走り出す。 何故この雷の中あんな場所に!バカか! 幸いにも少女は衝撃と音で気を失っていただけだった。 脳筋が抱き上げるとうっすら目を開け何やら小さく呟いてヘニャっという風に笑った。 ものすごく幸せそうな顔で。 その瞬間ハリムの胸は打たれた。
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