月と君と彼と

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「決して怪しいものではありません。 と、自称じゃ信憑性に欠けますが。 実は折り入って君に話したいことがあって 少し時間を貰えると助かります」 相手は唖然としているというか どう返事をしたら良いのか迷ってるといったところのようだ。 「普通、驚きますよね。 変な男が突然話しかけてきたら」 「…………」 名刺が偽造でない事の証に誤魔化しようのない 個人情報の最たる写真付きの運転免許証も添えると 少し彼の反応が変わった。 (…………?) 何故か渡した運転免許証を無言でしげしげと眺めている。 か、と思えばチラリと俺の方を見たり。 そんなに分からないほど写真写り悪かったか? それとも…… 「やっぱり変な人に変わりないから関わりたくないですか?」 何か疑われているのだろうかと 入れたフォローに彼から意外な言葉が返ってきた。 「あ、いえ。スミマセン、そうではなくて……」 「何か不審な点でも?」 俺自身が、と言われたらそれまでなんだが。 「いえ……え~っと、その…… 実際の年齢より若く見えると思ったので」 かなり口篭もった後、そう彼は言った。 「え?」 若く見えるということは女性に、或いはもっと年を取っていたら 誉め言葉に聞こえるかもしれないが、どういう意味だろう。
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