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月と君と彼と
そろそろ頃合いかなと時計を見た瞬間、
合わせたようにチャイムが鳴り響いた。
何回かの下見で得た情報として
恐らく今のチャイムが最後の授業終了のチャイムの筈だ。
「……さてと」
コンビニで飲み終わったコーヒーカップをゴミ箱に放り投げ
足早に学校の正門が見える道路向こうのバス停へ移動した。
本来なら正門に立ってハッキリ見極めたいところだが、
流石に部外者が何十分もそんな所に立っていたら
悪目立ちし、ともすれば何事かと教師に尋問されかねない。
やや遠目にはなるが死角ができる此処が
数日前からの張り込みで妥当だと判断した。
あとはバス待ちを装って、その時を待つだけ。
「見逃さないようにしないとな」
幾度となくスマホの画面を確認しては
溜息が漏れそうになるのを辛うじて抑える。
今更どう話を切り出すべきかと考えても仕方がない
駄目で元々、当たって砕けよう。
暫くすると下校する生徒が
疎らに校門から出てくる姿が見え始めた。
「アレ……だよな?」
手元のスマホの画面をもう一度確認し、
覚悟を決めてその人物の方へ走り出した。
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