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大物だろう。こんな馬車を用意するくらいだ。
言外に、「時間を守れ。」との含みだろう。
まだ少年とも言える年齢ではあるが、かなり頭が回るだけに
その意味が理解できてつらい。
窓の外を見ていると、急速に景色が移り変わる。
御者も理解しているのか、すさまじい速度だ。
「誰かをひき殺してなどしていないだろうか。」
本気で心配だ。
もっとも農民や商人をひき殺したところで、彼を処罰など
出来はしないだろうが。轢き殺した相手が「騎士。」であっても
「乗っていたのは別人だ。」と言う主張が100%まかり通るだろう。
そういった意味では安全である。
やがて、馬車は速度を落としていた。
「ふぅ、やっと都市部に入ったか。」彼は半日の遅れを
なんと言い訳すれば言いか考えあぐねていた。
やがてマンチェスターの街並みが見えてきた。
古代ローマのように、下水道が整備されていないため
街の住民たちはトイレの中身を路に向かって毎日投げつける。
そのため道路は汚物であふれており普段から鼻のひん曲がりそうな
悪臭が漂っている。こんな路を歩くなど真っ平ごめんだ。
この街は大英帝国の中央よりやや南西に所在があり、植民地から
大量に運ばれてくる、綿花から大規模な工場で布製品にすることで
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