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大英帝国の次期皇帝でも、出来ないだろう。
ハッペンハイム銀行の現当主モーセス・ハッペンハイム卿から
直接指名され、接待を任された。そういうことだろう。
その賓客は名前も不明、どこから来るどのような人物か、
まったく知らされていない。そこが不安だ。
ハッペンハイム銀行で、重役である彼が選ばれると言うこと
その年齢を考えれば、賓客の年齢は「ティーンエイジャー」
だろう。
「子供、か。」
濃い霧の漂う、
今日、この日は、
1760年 12月 25日。
先王の喪の明けぬままの聖夜であった。
接待人 ハイヤーハムシェルを乗せた豪華な馬車はスラムを抜け
治安が悪く、住む家がなく働くこともない犯罪者の巣窟
そこさえも天国と思えるだろう、
マンチェスターの中心部を抜け、薄暗く、陰鬱な雰囲気の漂う
ユダヤ人の住む場所に到着した。
たいていの人々は、ここをユダヤ人街などではなく
「ゲットー」と呼ぶ。
ここよりこの物語は始まる。
ユダヤ人、そう呼ばれる彼らは、後述する十字軍以降、蔑まれ、
社会の最底辺であった。彼らの生命はゴミと同価値であり、
日々、物を乞い、ゴミを漁って暮らしていた。
大英帝国の人々は、まるで流行り病を見るように
それを見ていた。
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