0人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ、どうするんだろうね。」
アデルはため息をつきながら、立ち尽くしていた。
B
ここは大英帝国、アン女王の逝去によりドイツからやってきた
ハノーファ朝の支配する。7つの海の支配者の大英帝国である。
植民地からの大量に安く流入する物資で、急激に工業化が進み
世界で唯一、産業革命を起こした超大国である。
首都ロンドンから紡績の都市マンチェスターへ続く主要路は
この季節には珍しく、雪にもならず、かといって雨ともいえない
すさまじい勢いで降り続くもので覆われていた。
道路は降り続くものでぬかるみ、路行くものすべてが足を取られ、
ゆったりとした勢いで動いていた。背中に荷物を背負い何かに打たれながら、
ゆっくりと歩く農民、荷馬車に油を塗った麻の布をかけて、商品の
綿製品を首都ロンドンまで運んでいく行商人、多くの荷物を載せた馬車は
ぬかるみにはまり立ち往生していた。
そんな中、時折鳴り響く雷鳴が、王侯が乗るような豪華に仕立てられ、
磨き上げられた馬車を光に包み、輝かせていた。
誰が乗っているのかは窺い知れないが、装飾過剰ともいえるその馬車は
4頭だてであり、馬も筋骨隆々とした4歳から5歳の牡馬だ。
ただ、その馬車は、周囲のぬかるみやゆったりと流れる人々を
最初のコメントを投稿しよう!