僕は病院に君の墓参りに行く

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僕は病院に君の墓参りに行く

俺は・・・という名前の平凡な夫だった。 小学2年のとき東京から田舎へ引っ越した おれは、田舎のガキ大将とそりが合わず、 孤独で居ることが多かった。 そんなとき声をかけてくれたのが 今の妻、紗百合だ。 サユと呼んでた。 田舎だったけど、そのころはまだ自然も残っていて、 田んぼでアメンボウを見たり、 池のほとりでなくウシガエルの声を聞き、 「どこに居るのかな」などといいながら 探し回っても、見つけることが出来なかった。 秋の川には源氏ボタルが居て、虫かごで周囲を照らして 電灯代わりにしていた。 夏にはオニヤンマやギンヤンマが飛び、 大きなスズメバチも居た。 サユが飼っていた犬が居なくなったのは、 小学5年のときだ。 もう歳だったので、老衰だったのだろう。 サユは死んだことは悟ったのだろう。 そのこと自体に悲しんでいる様子は無かった。 少なくともそのときの俺には気が付くことはできなかった。 しばらくして、保健所から連絡があって、 死体を引き取りに行った。 サユが以前通っていた、亡くなった祖母の家で 倒れ伏して死んでいたらしい。 餓死だったようだ。 サユは犬、名前はイチローだったかな、 その葬式をしたいと言い出した。     
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