スターイプシロン

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現在の状況はまったく理解できないが、 これが 、天使もしくは悪魔、いや それ以上の存在によってなされているものではないかと 心の中で叫んでいた。 体が10代半ば 15~6歳のころに戻っていたのだ。 しかし、トカゲがやってきて、ハイヤーの髪をわしづかみにすると 通路に放り投げた。 とかげは 不機嫌そうにうなった。 「早く列に並べ。」 自分に対する扱いから、少なくとも天国ではなさそうな気がした。 しかし絶望はない。 自分は この世の地獄である ゲットーで生き抜いてきた、 どのような サタンの支配する地でも生き延びる自信はあった。 自らが ユダヤ民族に対して 救済を模索した、その行為が 「悪」であったのか・・・それが気がかりだった。 もし、神がそう判断したのであれば、私の存在は何だったのだろう 泣き叫んで、暴れたい衝動に駆られる。 先程よりカラフルな巨躯のトカゲが来て言った。 ハイヤーの希望を そして絶望を打ち砕く一言を。 「お前の名は ハイヤーハムシェル・ハートシルトだな。」 ハイヤーは言葉を発することすらできずに呆然としていると、 「よろこべ、お前は選ばれし者だ。原始的な文明を持つ土人の中にも、 ときおり能力の高いものが現れる。われわれは、奴隷として     
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