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「パパはお金ないの?」
「うちは大丈夫だ」
実は先週、在宅プログラミングの仕事もそれ専門のAIに取って代わられ失業した。財団のモニター料とミクのパート賃金で生活を保ててはいるが。
「AI社会のこれからの仕組みとして、一部の人のところに溜まっているお金を、仕事のない人々に分けて配ろうという法案を作ったんだが、それが潰されちゃったんだ」
翔斗は説明を咀嚼するふうに黙っていたが、
「その一部の人たちが大切なホウアンを潰しちゃったんだね」
と表情を曇らせた。
利己心の強い支配者たちが格差社会を大格差社会に固定して、ひと握りの大富豪と膨大な大貧民の世界を創るつもりなのだ。
支配層は極論を選ぼうとしている。
極論はヒトを滅ぼす。コスモスだったらわかっているのに。
ふと気づくと真人の憤りが翔斗にも伝染っている。翔斗は大人びた表情で憎々しげに言った。
「一部の人たちなんてみんないなくなっちゃえばいいよね」
「そうだな」
うなずいてから真人は、はっと蒼ざめた。
今の自分の言動は……大丈夫だっただろうか……
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