side.奈帆

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私には好きな人がいた。 幼馴染の三村慎。 恥ずかしがり屋でクールだけも、本当は優しくてまっすぐな人。 私が困っているときはいつも助けてくれて、ばかだなぁっていいながら笑ってくれる人。 すぐ体調を崩して学校を休むのに、絶対にそれを言い訳にしないで努力できる人。 私はずっと慎が大好きでたまらなかった。 小さな頃からずっと。 もう1人の幼馴染、一瀬悟と慎と私。 三人で遊んでいたあの頃からずーっと大好きだったんだ。 だから、高3最後の夏休みの一週間前。 ジメジメとした毎日とこれから始まる受験生活に嫌気がさしながら、どこか夏の始まりに胸が高鳴るその日。 私は慎に告白することにる決めた。 ずっと幼馴染のままでいたくはない。 大学生になって今までみたいに会えなくなってしまう前に。 胸いっぱいに広がった溢れる好きを伝えたい。そう思って、私は慎の机に向かった。 「慎、今日の放課後一緒に帰らない?」 「ん?いいけど、三人で帰るのなんていつものことじゃん。」 「そうじゃなくて、その。三人じゃなくて二人で。」 そう告げると慎の目は大きく見開いた。 「だめ?」 矢継ぎ早にそう聞くと、慎は目を伏せる。 「あー……わかった。」 「ありがとう。」 慎の表情は見る人が見たらクールだろう。 でも、その瞳は少し揺れていて。 ずっと一緒にいたからこそわかる。 慎は動揺しているのだ。 もしかして私の気持ちに気がついたの? もしそうだとしたら。 それは嬉しいこと、なのだろうか。 嫌なこと、なのだろうか。 どうしてもそれがわからない。 私の心は不安と緊張と、小さな期待。 もう友達に戻れないかもしれない。 もしかしたら恋人になれるかもしれない。 ねぇ、慎どっち? 慎は私のことどう思っていたの? ずっと、ずっと、ずっと………。 その日は一日中慎のことを考えていた。 幼い頃に見せてくれていた無邪気な笑顔も最近の恥ずかしがるようなはにかみも。 私の頭の中は慎でいっぱいだったんだ。
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