side.奈帆

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放課後、少し早く部活を終わらせて教室に向かう。 そこに慎はいて私を待っているんだと思うと心が潰れてしまいそうだ。 片方の手を教室の扉にかける。 そして、もう片方の手を心臓に当てた瞬間。 声。 声が聞こえてきた。 大好きなはずの声。と、もう一人。 なんで今日は二人で帰ると約束してたはずなのに? 心臓が嫌な音を立て出す。 私がそっと教室のドアを開けて中を覗くと、そこにいたのは慎と悟だった。 悟?どうして、ここに? なんて疑問は一瞬で吹き飛んだ。 だって二人は今まで私のそばにいた二人とは全然違ったから。 悟の肩に力を預け寄りかかる慎。 繋がれた手。 愛しそうに見つめる二人。 え?どういうこと? 私の頭は真っ白になる。 聞こえてくるのは悟と慎の声だけ。 「慎、もうすぐ部活終わる時間だ。」 「わかってる……。」 「だったら俺帰るぞ。」 「待って、もう少し。」 「あのなぁ」 慎は悟の手をぎゅっと握りなおす。 「あと少しだけこのままでいいじゃん。」 「ったく仕方ねぇなぁ。」 呆れたように言いながらも悟は空いている手で慎のふわふわの頭を撫でた。 「悟?」 突然の行為に少し驚いた表情の慎は恥ずかしいのか下を向いた。 「たまにはいいだろ。」 「ん、嫌じゃない。」 「素直に嬉しいって言えよ。」 「ばっ………悟はずるい。」 「どこが?」 「そういう余裕ありまくりなとこだよ!」 「んーそうかなぁ?」 「そーだよ!」 そう言って軽く睨む慎の顔を悟はじっと見つめた。 「ほんとは嬉しいくせに。」 「だから恥ずかしいんだよ。」 「じゃあもっと恥ずかしいことする?」 余裕な表情で聞く悟に一瞬焦った顔を見せた慎は次の瞬間こくんと頷いた。 そして、重なる二人の唇。
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