再会

6/6
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「あんたが戻って行った後、村を取材したいって人たちが来たんだよ。その人たちが、みんなで吊り橋を渡った……そしたら、吊り橋が落ちたんだよ……」  そこまで言うと、穂香は下を向いた。やがて、その口から嗚咽が洩れる。  だが、僕にはかける言葉が無かった。言われてみれば、確かにそんなニュースを見た覚えがある。  もっとも、当時は父と母の離婚騒動で頭がいっぱいだった。そのニュースを見ても、考える余裕が無かったのだ。  ましてや、自分の過去にしでかしたことと関係があるなどと、誰が思うだろうか。 「それ……誰かに言ったの?」  かろうじて僕の口から出たのは、その質問だけだった。 「言えるわけない……あたしは、ずっと独りで……耐えてたんだ……なのに、あんたは今になって……」  穂香の言葉を、僕は胸が潰れそうな思いで聞いていた。彼女は、ずっと独りで耐えていたのだ。自分の犯した罪に怯え、苦しみ、さらに罪から逃れようともした。  だが、罪から逃げることは出来なかった。穂香は滝川村に残り、滅びゆく村と運命を共にすることで、自分に罰を与えようとしていたのだろう……。  そんな時に、僕と再会してしまった。  唯一、罪を打ち明けられる人間と。  この世でただ独りの、共犯者と――
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!