7人が本棚に入れています
本棚に追加
「……結婚する時言っただろ。これからは、ちゃんと思ってることを全部話すって。超能力者じゃないんだから、口で言ってくれなきゃ分からん。何があったんだ」
俺はそう言いながら、これ晩飯作ってないパターンだよな……などと考えていた。まだ着替えもしていないのに、六時間後にはまた出勤である。腹が鳴りそうになるのを堪えつつ、俺はひたすらに七海の言葉を待った。
「……高橋さんがね」
とうとう観念したらしく、七海は静かに話し出す。
高橋さん。確か、うちの隣に住んでいる七十代くらいのおばあさんだ。朝たまに会うことがあり挨拶を交わすが、感じのいいご老人である。
自分で頭の中でそう補足しつつ、俺は会話を促す。
「うん」
「高橋さんの連れていた、ワ、ワンちゃんが……」
そこまで言って、七海はボロボロと涙を零し始めた。
俺は静かにティッシュを箱ごと渡すと、彼女は子供のように声をあげて泣き出した。
「ワンちゃんの首輪が、ピンクの水玉だったの……!!」
最初のコメントを投稿しよう!