衝動

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  「……結婚する時言っただろ。これからは、ちゃんと思ってることを全部話すって。超能力者じゃないんだから、口で言ってくれなきゃ分からん。何があったんだ」  俺はそう言いながら、これ晩飯作ってないパターンだよな……などと考えていた。まだ着替えもしていないのに、六時間後にはまた出勤である。腹が鳴りそうになるのを堪えつつ、俺はひたすらに七海の言葉を待った。 「……高橋さんがね」  とうとう観念したらしく、七海は静かに話し出す。  高橋さん。確か、うちの隣に住んでいる七十代くらいのおばあさんだ。朝たまに会うことがあり挨拶を交わすが、感じのいいご老人である。  自分で頭の中でそう補足しつつ、俺は会話を促す。 「うん」 「高橋さんの連れていた、ワ、ワンちゃんが……」  そこまで言って、七海はボロボロと涙を零し始めた。  俺は静かにティッシュを箱ごと渡すと、彼女は子供のように声をあげて泣き出した。 「ワンちゃんの首輪が、ピンクの水玉だったの……!!」  
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