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この前は『電車で正面に座った中年男性のスーツの柄が横縞だった』だったし、その前は『スーパーでサングラスをした赤いスーツの女性を見かけた』だった。
そんなこんなで七海はいつも泣きながら電話をかけてくる。さらに、今日のように無言で事を起こそうとすることもしばしばだ。多忙の中、慌てて早退をする俺を見て、同僚に「とんだ物件に手を出しちまったな」と笑われたこともあった。
ただ、俺は知っている。
他の誰も知らなくても。彼女が何でもないような顔をして、ギリギリまで俺に心配をかけないように耐えているのを知っている。
昔親から虐待を受けており、様々なことから過去の恐怖がフラッシュバックしてしまうことも。小さい頃叩かれた傘の柄がピンクの水玉だったことも、知っている。
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