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「……。」 彼の揺るぎの無い口調と強い瞳に、幼少時から付き従っている老練の近衛騎士も言葉に詰まる。しばしの無言。彼は自分の後に続く兵達を見、告げた。 「……隊列、止まれ。」 しかしそこで言葉は終わらず、今度は王に真っ直ぐ向き合って続ける。 「私は、貴方の護衛を先王より仰せつかっております。この命が解けぬ限り、私は貴方の元を離れる事は許されません。」 先王とはつまり、昨年逝去したライオニールの父親の事だ。 「グレン!」 「勿論、禁忌の森へ私は立ち入る事は出来ません。行ける場所まで護衛させて頂きます。そこで待ちます。貴方が戻るまで、待ちます。」 静かな口調だが、老練の騎士の眼孔は鋭い。どちらも必死の形相だ。頭上近くまで登ってきた太陽の陽気と雲一つ無い青空の風景と言うのが酷く不似合いだったが、それを少しでも馴染ませたいのか強い一陣の風が二人の間に流れた。しばしの沈黙の後、若い王が終に折れて口を開く。 「……一人で待つことは許さない。一部隊で、だ。」 「はっ、承知致しました!」 今では髪も髭も大分白くなった老兵の表情がパッと明るくなる。彼はすぐさま振り返ると、見た目と年齢に似合わぬ張りのある声で号令する。 「レンの部隊は私と共に残れ!クリフ、お前が先導し早急に城へ戻り配備に着け!」 「「はっ!!」」 大国でも随一の騎士団だ。兵達はあっという間に一部隊を残して去って行く。昨日から少し強くなっている風によって、その土埃もあっという間にかき消された。領内とは言え、最北端の僻地に部隊を待機させることに不安が無いとは言えない。しかし物心ついた頃から教えを受けたグレンに、ライオニールもこれ以上抵抗する術は無かった。何より今でも尚、自分より剣の腕も確かな彼と彼の育てた精鋭達ならば、最悪の事態にも対応出来る。そう、王が戻らないと言う最悪の事態にも。 ライオニールは改めて口を開く。
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