僕の扉が開いた

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僕はセイを駅まで見送りすることもなく普通に別れた。 僕にとってセイは特別な存在だからこそ、できるだけ普通にいたかった。 おそらく恋愛感情のようなものを抱いているのは間違いなかったけど、僕にとって初めての存在である彼との関係を壊したくなかったからだろうと思う。 セイが僕のことを悪くは思ってないだろうという感覚はあったものの、セイは好き嫌いがはっきりしているところがあるから、僕の態度に違和感を感じているだろうと思った。 でも、僕は僕らしくいたかった。 セイだからこそ、偽りの自分でいるのは嫌だった。 セイが理解してくれるかはわからないけど、今後の関係がどう転ぼうとも、本当の僕を受け入れてもらえないのであれば仕方がないという感覚もあった。 僕は家のことを済ませると、 SNSを開いた。 彼から連絡が来ているのに気づいてはいたものの、僕は何でもひとつひとつ済ませないといけない(たち)だったから、何でも終わらせてから彼にゆっくり返信しようと思っていた。 ―― 今日は楽しかったよ♪ またコーちゃんと会いたいなっ! 家のこと大変だと思うから無理しないでねっ コーちゃんと会って、セイはコーちゃんのこともっともっと大好きになっちゃったよー笑っ 疲れてると思うからゆっくり休んでねー♪ ―― ―― 今日はありがとう。 僕もセイちゃんと会えて嬉しかったよ。 なかなかゆっくり会えないけど、僕はまたセイちゃんと会えるのを楽しみにしてるよ。 僕もセイちゃんのこと大好きだよ。 今日は本当にありがとう。おやすみなさい。 ―― 彼のアカウントを見てみると、僕との写メが加工して載せてあった。僕の顔がわからないように。 それを見たとき僕は不思議な感覚になった。 非現実的な世界に感じていたSNS。 そこにいる人達が実際に存在していることすら想像できない時があったけど、僕は明らかにそこの世界の人と会った。 僕が今後、セイとどういう関係になるかもわからないし、それ以外の人達とどういう縁があるかもわからない。 でも僕はひとつ確信できた。 僕の新たな未来への扉が開かれたことを。
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