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三人で家に帰り、リビングのソファーに腰を下ろした。
「絃ちゃん、ずっと嘘をついていてごめんね。でもね、お母さんのことを考えてくれる絃ちゃんの気持ちが、すごく嬉しかった。絃ちゃん、一年間、詩ちゃんと過ごさせてくれて、ありがとう」
母は私の身体を横から抱き締めて、また泣いているようだった。
「私こそ、変な思い込みをして、皆に心配と迷惑をかけて、ごめんなさい。私の拙い嘘に付き合ってくれて、ありがとう」
私の声も涙声で、震えている。
「絃。これから、幸せになりなさい。心の中の詩と共に」
「……うん」
私は、絃。
双子の妹、詩は死んでしまったけど、仲が良すぎて、一緒になっちゃったんだと思うことにした。
私の嘘は、皆の優しい嘘で守られていた。
*終*
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