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絃ちゃんの大好きだった母が焼いた食パンだ。
好みは似ていたけど、絃ちゃんはパン派、私はご飯派。それだけは双子でも何故か違った。
「学校に遅れるわよ」
「はーい」
目の奥が熱くなるのを笑って誤魔化し、急いで食べて、母から絃ちゃんの分を受け取ってから、部屋に戻った。
ドアを開ければ、誰もいない静寂に包まれた空間があるだけだ。
秋も終わりに近づき、肌寒くなってきた。でも、室温以上に体感は寒くて冷たくて、肌に刺さるように痛い。
絃ちゃんがいた時は、冬でもなんとなく暖かかったのに。
そんなことを思いながら、私は母の作った朝ご飯を絃ちゃんの机に置いた。
ここからが大変だ。
私は自分の分を食べた後、絃ちゃんの分を食べる。
苦しくて仕方が無いけど、母の想いを捨てることなんてできない。
その代わり、太るわけにもいかないから、給食をあまり食べないようにしている。
私は悲しくて食欲が無いのだと、皆が思い込んでいるのを利用しているのだ。そんなところでも、私の胸はキシキシと音を立てて軋む。
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