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「うん、一応妹がいるけど……もう会えなくなっちゃったんだよね」
無理に口角を上げ、努めて明るく振る舞ってみせる。普段と違うその様子に何か感じたのか、それについて深く質問する者はいなかった。
「でもね、ここだけの話……ミュウ、知らないうちに妹の反感買っちゃったのかもしれないの。最近いろいろおかしくて」
触れられないとそれはそれで、物足りない気持ちになる。美雨は自分から、話を掘り下げた。
「婚約してた彼に、急に振られちゃったんだよね。私がヒステリー起こすような女だって、もしかしたら妹がばらしたのかもしれない。それからこれも最近なんだけど、友達から急に返事が来なくなったり、知らない人から変な目で見られたり……。あとは、カップ麺作ろうと思ったらお湯がぬるかったし、それから……」
こうやってパソコンに向かって延々と話していると、聞く人などいない壮大な独りごとを言っているような気持ちになる。だけど今さら、この舞台から降りる気にはならない。
そんな美雨を画面越しに、凍る思いで見つめていたのが、琴子と広樹だった。
「琴子さん、俺、美雨が何を言っているのかわからない」
琴子のノートパソコンから目を逸らすようにして、広樹が言う。
「ごめんなさい、私もちょっと……そもそも美雨、こんなこといつからやってるの? 広樹くんはいつから知っていたの?」
「俺がこれ見つけたのは、別れる二週間くらい前です」
そのときの記憶が蘇り、広樹は思わずため息をこぼした。
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