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「その動画って、見ようと思えば私も見られるの?」
しばらく一点を見つめ黙り込んでいた琴子は、決心したようにつぶやいた。広樹は隣の部屋にいる琴子の夫に気を遣い、小声でお茶を濁す。
「見られないこともないと思いますけど……。琴子さんは見たいんですか?」
「見ないわけにいかないでしょう」
初めて聞く少し強めの口調に、広樹は一瞬怯んだ。目の前のノートパソコンでは、美雨が狂ったように紙を破いている。「双子の妹」のせいでおかしなことが起こると話し始めた美雨は止まらなくなり、さっきからボソボソつぶやいたかと思えば叫ぶという様子を世界中に発信し続けている。この配信が終わるまで、あと十分もある。
「これよりもひどいの? その動画」
広樹は黙って首を縦に振る。美雨のあんな姿、思い出すのも苦痛だった。それが、世界中に配信されてしまっているなんて。
「琴子さんには、見ないでほしいです」
絞り出すように言ったが、琴子は哀しそうな目で首を横に振った。
「ごめんなさい。美雨のことが心配なの。どんなにおかしくなってしまっても、美雨は美雨だから。美月ちゃんの分まで、私が守ってあげなくちゃ」
「どうして琴子さんは、そこまで美雨の味方でいられるんですか? こんな発狂してる姿を見て、普通だったら……」
広樹の言葉を遮り、遠くを見るような目で、琴子は言う。
「美月ちゃん、私のせいで死んだの」
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