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『みう、別れたって本当? 落ち込んでないか心配だよ?』
美雨が婚約者と別れたことを知ると、友達はメールやグループトーク、SNSのコメント欄で声をかけてくれた。美雨は自分に非があったと答え、周りはその言葉を聞いて『こんないい子を振るなんてほんと見る目ない!』『そんな人とは別れて正解じゃない?』などと励ましてくれた。
何が悪かったのよ! と泣きごとを言えるのは、二十年来の友達の前でだけだ。
「ついに彼の前でヒステリー起こした?」
にやりと笑う琴子は背が高いので、向かい合って座ると少し見上げるような姿勢になる。
「そんなわけないよ。彼の前では一回もそんなことなかったし、ぜーったい完璧だったもん」
ふてくされて返すと、いつものようにくつくつと笑われた。
「美雨、怒ってる姿だけは、私にも見せてくれないもんね」
アイスコーヒーをストローでかきまぜる琴子と、暖かいカフェオレで手を温める美雨。正反対なのに姉妹のように見えるのは、幼い頃から一緒に育ってきたからだろうか。ふたつ年上の琴子は、美雨を甘やかしてくれる。
「なにが悪かったのかな」
「だって美雨、結局、彼に笑っているところしか見せてないんでしょう? それはやっぱり、相手にとっては寂しいし、不安だよ」
「でも……」
美雨は、周りの人たちが悲しんだり、憎んだり、嫉妬したりする姿を平気でさらけだしていることが、どうしても理解できなかった。
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