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雲間からのぞいた太陽が、たっぷり実った麦穂を照らし出す。あたり一面に広がる黄金の畑は、風に撫でられそよそよと音を立てる。
これらが全て、本物の金であればもう少しまともな暮らしができるだろう。
事実、我々の手元に残る麦はわずかばかり。汗水流し育て、愛をこめて刈り取ったとて、ほとんど口に入らない。
と考えると、くそったれ。こんなにも憂鬱な収穫は無いものだ。元来収穫とは、心躍るものではないのか。収穫物のほとんどは、この国の王が税という形で徴収している。絶対君主制である以上仕方が無いとはいえ、それにしても負担が大きすぎる。大体、こんなに―
おっといかんいかん、王族への不平不満は極刑に値する。かの慈悲深く偉大である、少しばかり食いしん坊な王様の為に必死で尽くさねば。
温和で寛容な前王が逝去され、嫡男であった今の王が即位したのは1年前。
権力の使い方を教わっていなかったのか、息子にも温和すぎたのか、とにかく今の王にとって権力とは、恐怖政治による服従を強いることらしい。
わずか1年足らずで、かつて潤っていたこの国は衰退、国内の貧富の差はどんどん広がっていった。
当然のように民の心は荒み、一触即発、爆発寸前まで憎しみが募っていた。
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