【青】を沈思する

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純朴な外観のこの建造物は、人が暮らすための集合住宅にも見えた。 通路に面した壁面には、窓が取り付けられている。 それが、部屋ごとの区切りなのではないかと考えられる。 しかし、それらにも人の影はなく、不確か。 在るのは、窓の外。 眼前の通路上に、このような場所に相応の物。 廃棄物というよりも、不要物。 用途があるのかどうか分からない、木片や鉄屑等。 汚物と思わせないのが、不思議なところだ。 それは、人を感じさせるけれど、人の温もりは無い。 左右にも、地を這うように、より細い通路が延びている。 女は、漠然とした自分の感覚に身を任せ、前進し続けた。 ………… すると、行き止まりとなった。 その場に佇み、周囲を見回す。 ___ 此処は…… 特に、"青"が色濃い。 女は、積み上げられた木板の隣に、石壁に背を預けて座り込んだ。 深く……空気を、吸い込む。 青い世界に、 溶かし込まれ、呑み込まれるような感覚に陥る。 【青】とは、美しい地だ。 ……あぁ、 そう、この"青"に連想するものは__
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