口内を揺蕩う 憩

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この茶には、目を引き付けるような、 そして目が離せなくなるような、特徴がある。 それが、名称の由来だ。 『ラブラド レッセンス Labrad-rescence 』 これは、ラブラドライトという鉱物、 その輝きの呼称だ。 鉱物自体は黒味がかった色、一般的な石の色である。 しかし、 その現象は、光の反射により起こる。 見る角度によって、反射の様が変化し、 それは…… 青く、輝くのだ。 青だけでは無い。 多様な色が、鮮やかに、 舞うように、踊るように。 それが、液体の表面に現れては消える。 白よりも黒に近い色のカップの方が、良く映える。 朽葉は、カップを唇に寄せ、茶を口に含む。 そして、目を閉じる。 瞼の裏に現れたのは…… 色だ。 濃く、強く、深い、 この色は、 青__では無い。 「お好きなのですね」 店主の声に応え、瞼を上げる。 これは、きっと問いでは無い。 「……えぇ」 朽葉は、再び肯定する。 そして、また、 彩りを口へと運んだ。
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