【青】を沈思する

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太陽と月と星の光を感じることができているから、 地上と同じ光を感じることができているから、 だから、安心していた。 けれど、 ふと、不安が過る。 その時にはもう…… この体は海の底にあって、 手足は流れによって動いていただけで、 呼吸は……初めからできていなくて…… ――自身をどうすることもできない。 自身が存在していても、 時間も、感覚も、世界も、 ――自分のものでは無い。 「自分は自由では無い」 ――自由という概念さえ無いのかもしれない。 だから…… "だから"、 浸っていればいい。 漂っていればいい。 身を任せて。 心を鎮めて。 ……沈めて。 ――安心をして。 此処は、そんな…… 「__いいね」 背後から、男の声が聞こえた。 一度顔の向きを戻し、体を捻る。 背をもたれ掛けていた石壁、その上に嵌められていた窓から、同年くらいの男が顔を出していた。 「……」 男の存在を認知したその瞬間…… 感覚が研ぎ澄まされて、集中する。 自分の肌を、熱気か冷気、はたまた電気が撫で上げるように感じる。 ……何だろうか。 同じ、人、であるのに、 何かが違う。 胸の内が震える。 ただし、それは温もりを催すものではない。 これは、異質なものに対する、 恐れ……いや、畏れ? ――異色の美しさ。 『白』色。 彼の体、 髪や肌、目等、 すべて、 薄い、と言うよりも、 白みを帯びている。 ……いや、それも少し違う。 内から、裡から、 "白い光を放っている"。 …… 特に印象的な、 銀色に近い瞳で見下ろされている。 それは…… "星が降っている"。 そう錯覚しそうになる。 けれど、 そう見える、そう感じる。 この世界で、彼だけが、 ――【青】に、おかされない。
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