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川が流れている。なんてのどかな場所だろう。心の底から沸き起こる平穏さ。
向こう岸に誰かいる。ずっと会いたかったシルエット。それが妻と娘だと分かるよりも早く、私は川に飛び込んでいた。中腹まで来た時、急に霧がかかりだした。待ってくれ、せめて一目だけでも合わせてくれ!そんな懇願も虚しく、2人の声だけを残し、視界は完全に覆われてしまった。
ゆっくりと時間をかけ、リハビリと治療を続けた。
あれが現実だったのか夢だったのか分からない。だけど、どちらでも良い。
ただ、君たちがかけてくれた言葉は決して忘れない。
「貴方の悲しい顔は見たくない。貴方には私達の事は見えないかもしれないけど、私達はいつでも側にいる。だから、どうか幸せに生きて。」
二人の死を乗り越えたと言えば嘘になる。乗り越える事なんてできないかもしれない。
今も時々、どうしようもない、虚無感に襲われる。だけど、今は死にたいなんて思わない。今はもう、前を向いて、歩んでいける。
見えないけれど、君達が側にいてくれるんだから。
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