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それから数日後、取引先の片岡さんと打ち合わせの後、どこかで飲もうという事になり、飛び込みで洒落たbarに入った。カウンターに座ると離れた席に髪の長い女性がいた。聞くつもりはないが椅子が4つ離れた席にいるんだ。聞こえてしまった。
「出会った瞬間、恋に落ちて…そしてすぐに失恋しました…。今も、忘れない…ときめきと切なさを同時に味わったあの日の事。
忘れられない瞬間がずっと心に居座っているんです。その人は家のリフォームを担当した会社の職人さんでした。」
カウンターに座る彼女はその職人の薬指に光る指輪を見て…諦めたのか…そりゃ諦めるしかないよな…。
片岡さんが固まった。えっ…そう言えば、片岡さんは職人さんだ。まさかね…。
マスターは暫くその女性の話を聞いていた。若いバーテンに注文してカクテルを作ってもらう。その間も何気なくマスターの様子を気にしていた。
マスターは彼女の話を聞いて、あっという顔をして頬を人差し指でポリポリとかいた。そして後ろを向いて壁を見た。すると驚いた事に壁に開いている無数の差し込み口が出現した。差し込んであるプラグを引き抜くと別の場所に差し込んだ。
まさか…これって…。
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