その駅に降りてはいけない

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次の車両に進むと俺の予感は的中した。 青年の前を通り車両のドアに手をかけて、青年を一瞥した時はっとした。 青年はいなくなるどころか、こちらを見上げていたのだ。 「うわっ」 そう驚くと青年はゆっくりと立ち上がり、俺が来た道を戻ってさっき俺がいた車両に入っていった。 急いで次の車両に行くとギャルとサラリーマンが既に立ち上がってこちらに向かって来ていた。 二人とも顔色が悪くこちらに一瞥もくれなかった。 目を伏せてお互いすれ違おうとしたその瞬間。 「この先には進まない方が良いですよ。」 振り返るとそこにはもう誰もいなかった。 とっくに駅に着く時間を過ぎているにも関わらず、同じような風景を電車は走り続けている。 途端に怖くなりさっき言われた忠告を信じ、俺は一目散に来た車両を全力で戻った。 しかし戻っても戻っても誰もいない。 元の車両に着いた後、俺は疲れ果てて元の席に腰を降ろした。 何が何だかわからない。全部夢なら早く覚めてくれ。 そう思い目を瞑ると最寄駅の到着を知らせるアナウンスが流れた。 なんだ、動かなければよかったのだ。このまま目を瞑り最寄駅に着くまでやり過ごそう。 電車が止まりドアが空いて涼しい風がなだれ込んで来た。 さて着いたみたいだな。しかし次の瞬間、青年に強い力で押さえつけられていた。 「何するんだ、どけよ!」 「あんたはここで降りちゃいけない。」 ものすごい形相で突き飛ばされ、ドアが閉まった。 青年に向かって怒鳴り散らそうとすると、向かい側にはギャルとサラリーマンしかいなくなっていた。 最寄駅に着き、ギャルとサラリーマンと俺は駅を降りた。 家路に着くと妻がまだ起きていた。 「あら、お帰りなさい。電車止まってなかった?」 「ただいま。何で?」 「一時間前にうちの駅と隣の駅の間で若い男の子が人身事故で亡くなったみたいなニュースが流れてたわよ。」 これはあくまで単なる推測だが、自殺した彼の世界に俺は一瞬紛れ込んだのかもしれない。 そこで彼は俺が間違えてあっちの世界に通じる駅に降りないようにしてくれてたのだろう。 あれから一ヶ月が経ち、そんな推測も忘れ去っていつものように終電に乗り最寄駅まで眠りに着いていた。 涼しげな風を受け目を開けるとギャルがものすごい形相で俺を強く押さえつけてこう言った。 「あんたはここで降りちゃいけない。」
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