七不思議の時計塔

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「そういえば先輩。なんでそんなこと訊くんですか?」 「んと、ちょっとこの高校の歴史に興味があってね。」 まさかクラスメイトが幽霊かもしれないからとは言えないので出まかせを言うしかない。 「なるほど。確かに都市伝説や神話、民話はその土地の歴史と深い繋がりがありますからね。」 そこまで大層なことは考えていない。 その時麻紀ちゃんが突然立ち上がったかと思うと戸棚からA3サイズの大きな本を持ってきた。 「新聞部の学校新聞。昭和二十二年の創刊号からあるのでご参考にどうぞ。」 私は感謝を言いながらページをめくる。 新聞部は数年前まで存在していた歴史ある部活動でこの本はそのバックナンバーのようだ。 「え、そんなのあったの。私知らなかったよ。」 「智美は先輩の話聞かないもの。」 二人の会話を聞き流しながら新聞を流し読みしていると少し気がかりな記事を見つけた。 時計部廃止についての記事だ。 つまり大昔はあの時計は生徒が管理していたのか。 その記事ではある事件の後、安全面を考慮して生徒でなく教師の管理下に置くことにしたらしい。 ある事件? 何があったのだろうか。 そういえば文学部日誌に時計塔からの飛び降り自殺があったと言っていた。 そのことだろうか。 私はその事件の記事を見つけるためにページをめくる。 『昨年度の時計塔での事件……』 去年ということはもう少し前だろう。 何を予感しているのか。不思議と鼓動が早くなる。 『あの事件から早三ヶ月……』 これが三月の記事なので事件は十二月か。 ドクドク、ドクドクと早くなる鼓動の周期 『時計塔封鎖解除』 いつかのように聞こえなくなった耳に紙をめくる乾いた音が後を引く。 『全校集会にて黙祷』 次のページには号外の新聞があった。 『時計塔にて女生徒飛び降り自殺』 淀む空気と滞る時 『いじめが原因か』 『自殺した生徒の名は……』 もし本当に幽霊がいたら……。 『降池夕子』 得体の知れない恐怖に私の微動だにできなかった。
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