夕陽の時計塔

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放課後部活時、私は図書室にいた。 図書室は不思議な空間だ。 まるで人が本に合わせているかのように空気が静かに止まっている。 そして反対に時間はあっという間に過ぎてしまう。 古い本が発する香りも心地よく、私が好きな場所の一つである。 私は読む本を探すために小説のコーナーに向かう。 空教高校の歴史は古く、江戸時代の藩校まで遡ることができ、そのせいか図書室にも古い本が多い。探せば戦前の本すらあるくらいだ。 もちろん新しい本も多いが私はその大半を読みつくしているのでたまには古い本を読むのもいいかもしれない。 そう思いながら本棚を流し見していると一冊の本がたまたま目に留まった。 こんな本、あっただろうか。 いや、あったはずだ。 前述の通り、私は本を読むことが好きなので図書室の本は粗方知っている。 知っているのはあくまでも知識的に知っている程度であって興味が引かれない、読んでない本は数多くあるし読めもしない(外来語などの)本はいくらでもある。 ただ、見たことある分、本の配置がおかしかったり新たな本が入荷するとそれとなく気が付けるのだ。 ただ、今回は少し違う。 いままで、そこにあっただろうに私が気が付かなかったというか…………。     
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