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「『まさかな』という気は確かにワシにもあった。そんなオカルト染みた話があるハズがないと。だが、その疑問は日に日に強くなる一方でね。それでついに『試す』ことにしたんだ」
幹夫は背中に寒気を覚えた。
『ひとりの人間』が死に、『もうひとりの人間』が奇跡としか言いようが無い回復をする。
このふたつに何か関連があるのだとしたら、それは。
「ある日、ワシは何気なく『清美』に言ったんだ。『そう言えば、入院してた時に警察手帳を忘れた事があったっけ。あの時はお前にも迷惑掛けたな』って。そしたら、『清美』が口を滑らしたんだよ。『物がモノだったらかね。でも大丈夫、誰にも喋って無いから』‥‥ってね」
先程の話が正しければ、『清美』は入院当初時には意識が無かったハズである。なのに『それ』を知っているというのは‥‥
思わず、幹夫の顔が引きつる。
「‥‥『その事』を知っているのは件の看護師だけのハズなんだ。慌てて電話して手帳を確保して貰ったからね。『面倒になるから黙っててくれ』と頼んだのもワシだ」
男は再び、コートのポケットに手を入れた。
「ん?‥‥今ので最後の1本だったか‥‥まぁいい」
そして、ふーっと息をついた。
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