『それ』は偶然と言う名の運命で

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だとすると、夜学か。 幹夫の通う大学には、社会人のための夜間講義がある。彼女がその学生であれば見ない顔でも不思議はない。 苦学生なんだろうか?そうならば此処なら大学も近いし、場所的には良いのかも知れない。 それに『割と暇そう』な店だから、空いた時間で勉強することも出来るのだろう。四六時中混んでいる繁盛店では、こうは行くまい。 コーヒーが出て来るまでの間、幹夫はそんな風に考えを巡らせていた。 「‥‥。」 さきほどの彼女がやって来て、無言のまま出来たてのコーヒーを幹夫のテーブルに置く。ガラスのテーブルにソーサーが当たってカチャッと軽い音がする。 コーヒーカップを持つその指先は細く、薄暗い照明だが色白な印象を受けた。 幹夫がシュガーを取ろうと手を伸ばした時、すでに彼女は自席に戻って何事も無かったかのように勉強を再開していた。 不思議な存在感がある人だ。 幹夫はそう思っていた。 まず、年齢が分からない。 顔つきが若いから10代後半か20歳そこそこなのであろうけど、ヘンに落ち着きがあるというか。 雰囲気だけなら人生のベテランと言っても差し支えないだろう。他人を近づけさせない雰囲気(オーラ)がある。     
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