自らが何者であるかをも知らずして

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これほどの『業』を抱える者に、何と言ってやれば良いのだろうか。自分ではあまりに経験不足過ぎて、何も思いつかなかった。 「『私』は何時からこの世に居るのかしら。もう、自分でも何も覚えてないわ。数百年前なのか、それとも数万年も前からなのか‥‥でも、終わりが近い事は確かね。‥‥『この身体』は、もういくらも『持ちそう』にないから」 やはり、と幹夫は思った。 彼女は、死にかけている『清美』の身体を無理矢理に延命させているのだ。 恐らくそれは代謝を極限にまで低下させる方法なのだろう。若い身体は代謝が高いので病気の進行も早くなるのだ。 なので、それを逆手にとって代謝を落とすことで延命を図っていると見ていい。だから『体温』が無いのだ。 ただ問題は、それがいったい何の為にそんなことをしているのか‥‥だが。 そして。彼女は『次』を望んではいない。 このまま『清美』のまま最後を迎える覚悟のようだ。 それは、単に『お父さん』との約束だけが理由なのか、それとも何か別に想いがあるのか‥‥それ以上は、彼女は語らなかった。 「さ、電車が来たわよ」 彼女が立ち上がる。そして幹夫を促すと二人で電車に乗り込んだ。 電車が走り続ける間、二人は何も語らなかった。 「じゃぁ‥‥ね。また今度」 先に、彼女が電車を降りる。     
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