例え今日が『終わりの日』であろうとも

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幹夫が吐く息は白い。 だが、彼女の口からはそうした『白い息』は出ていない。 ふと、幹夫は肩に冷たいものを感じた。 「あ‥‥雪だ」 上空を見やると、チラチラと雪が振り始めていた。 「寒いハズだよな‥‥」 幹夫が足を止めて、空を見上げる。 掌を上にしてみると、細かな雪がヒラヒラと舞い降りて、そして幹夫の体温で溶けて儚く消えていくのが分かる。 彼女もまた足をとめ、幹夫のマネをして掌を上にしてみせる。 だが‥‥その掌に降りた雪が消えることは無かった。 そのまま、まるで置物にでも降り積もるかように雪が積み重なって‥‥ 「‥‥っ!」 幹夫の胸に熱いものが込み上げてくる。 彼女は何も言わず、じっと自分の掌に積もる雪を眺めているが『その身体』が代謝の限界を迎えているのは明らかだった。 もはや、体温を生み出すものが何も無いのだ。 分かってはいた事だ。 『彼女』は『清美』の生命を膨らませているのではない。 まるでパレットの絵の具を薄く引き伸ばすかのように『薄めている』だけなのだ。そこに限界があるのは明らかだった。 だが、彼女を見続けていると『それ』が無かった事のように思えてならなかった。しかし、その『現実』は決して無くならないのだ。 「‥‥清美さん!」 「ん‥‥」     
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