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ただ苦しくも、それでも人の親として
意外にも簡単に『須藤警視』は見つかった。
「娘さんのことで!」と言ったら、すぐに繋いでくれたのだ。
「‥‥もしもし?」
電話の向こうで、聞き覚えのある声がする。
「僕です、幹夫です!あの、その節はすいませんでした。あの‥‥『彼女』が重篤なんです!県立病院まで来てくれませんか?すぐにです!」
だが、電話の向こうは冷静だった。
「君‥‥まだ『あの女』に関わっていたのかね?」
「それについては後でどれだけでも謝ります!でも今は!それどころじゃ無いんですっ。彼女が‥‥!」
「言っただろ?『あの女』はワシとは赤の他人‥‥」
冷たく突き放そうとする『父親』を咎めるように、幹夫が電話口で怒鳴る。
「彼女は!アンタが言うような『魔女』なんかじゃぁ無いんだっ!」
幹夫の大声が、誰もいない待合室に響く。
「魔女でなければ‥‥何だと言うんだ‥‥『あの女』は清美の身体を乗っ取ったんだぞ!」
電話口の向こうから激しい怒りが伝ってくる。
「違いますっ!」
幹夫が憤然として反論する。
「彼女は‥‥いや、清美さんは『彼女』に託したんだ!自分の意思でっ!」
「何を勝手なことを‥‥」
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