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そして運命は新たなる選択をする
気象庁の長期予報ほどアテにならないものはない、と幹夫はため息をつく。
だいたい、いつもそうなのだ。『空梅雨』と言われれば長雨になり、猛暑と言えば冷夏になる。
今年もそのパターンで、事前に猛暑が予測されていたにも関わらず、いざ夏本番になったら『平年よりやや低め』に落ち着いた。
真夏のはずなのに、日が暮れて暫く経つと外は涼しいくらいだ。まして水際は気温が上がりにくい。
幹夫は「もう一枚、余分に羽織ってくれば良かった」と後悔をしていた。
普段は人気の少ない港町も、1年のうち今日だけは大勢の屋台と観光客で賑わいを見せる。
そう、花火大会なのだ。
先ほどから単発的ではあるが、花火が夜空を彩っていた。
時折吹く夜風が冷たい。
これだけ冷えるのであれば、如何に清美が暑がりであったとしても充分に耐えられたであろうと思う。
無論、生きていたならば‥‥の話だが。
あれから、幹夫は清美とその父親の消息を知らない。
病院で別れたきりである。
おそらく何処かで葬儀を済ませたであろうけど、幹夫はそれにも参列していない。まぁ‥‥呼ばれても行く気になったかどうかは怪しいものだと思うけど。
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