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確かに、彼女自身が来れることは無くなった。
だが、自分だけでもこうして来ることで何かの供養にでもなれば‥‥と幹夫は考えていた。
ドン!ドン!ドドン!
仕掛け花火が対岸を明るく染め上げる。
それをじっ‥‥と見上げてから、幹夫は再びアテもなく歩き始めた。
その時だ。
フラフラと歩く幹夫のすぐ左脇に、まるで身体を寄せるようにして歩いている女性がいる事に幹夫は気がついた。
上背がある人だ。
少なくとも清美よりは10cm程度は違う。ヘタをすれば自分よりも背が高いかも知れない。浴衣の着こなしがキレイな女性だ。
無論、幹夫は誰とも約束はしていないし、その女性に心当たりなぞあろうハズも無かった。
‥‥人違いか?
幹夫は少し様子を伺うことにした。
なるほど、傍目から見ていると二人は『連れ合い』に見えるだろう。もしかするとこの暗闇で、その女性が誰かと自分を勘違いでもしてるのでは無いか、と勘ぐったのだ。
幹夫は歩くペースを落としてみる。
すると、その女性も無言のまま歩くペースを下げた。
「‥‥っ!」
とある恐ろしい想像が、幹夫に襲い掛かる。
全身の毛が逆立つような気分がする。
まさか‥‥いや、そんな‥‥そんな馬鹿な‥‥っ!
『彼女』は「次はない」と‥‥。
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