そして運命は新たなる選択をする

4/6
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
何かの拍子に、幹夫の左手が女性の右手の指へ触れた。 ひんやりと冷たい感触が幹夫に伝わる。身に覚えがある、あの感触‥‥ 思い切って、幹夫は女性の手を握ってみた。いくら何でも他人だったら、すぐに振りほどこうとするだろう。 だが、その意に反して女性の右手は‥‥幹夫の左手を優しく握り返してきたのだった。 『彼女』だ‥‥ その瞬間、幹夫は確信した。 何時の間にか幹夫の足は止まって、その場に立ち尽くした。 その女性もそれに呼応するように、その場で立ち止まっている。もう、間違いが無かった。あれからどうしたのか見当も付かないが、兎に角『彼女』は『次』に乗り替わったのだ! 何と言えば良いんだ‥‥ 幹夫には言葉が出なかった。 「良かったね」とでも言えば良いのか?いや、それは違うだろう。その『代償』として、彼女は誰かの生命を奪っているのだから。 ‥‥もう‥‥充分だ‥‥ 幹夫は黙って女性の手を強く握る。 もしも願うことならば、だ。 勝手を言うようではあるが、出来ることなら「このまま何も言わずに去って欲しい」と。 そうすれば、幹夫自身も『何かの間違い』で事を収めるられると言うものだ。 『彼女』は何処かで生きている。それだけで充分だった。もう、それ以上を望む事は考えられなかった。 ドドォォォン!     
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!