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一際に大きな音がする。クライマックスの3尺玉が上がり始めたのだ。
「‥‥キレイね‥‥」
女性が口を開いた。
頼む!
もう‥‥それ以上、何かを言うのはやめてくれ‥‥
幹夫は心の中で叫んだ。
「‥‥来ようか、どうしようかと迷ったんだけどね」
「‥‥。」
「結局、来てしまったわ‥‥まぁ‥‥あなたが居なければ、そのまま帰るつもりだったけど」
彼女の手を握る幹夫の左手がブルブルと震えているのが、自分でも分かる。
「‥‥もう止めるつもりだったんだけどね‥‥でも、気がついたら『こう』なってたの。多分、本能的な何かが勝手に働くのね、きっと」
女性は淡々と語る。
「ん‥‥私、ギリギリ覚えてたよ?ふたりで『花火を見る』って約束。確か、そうだったわよね?」
そうか‥‥
幹夫はふいに理解出来た。『彼女』は人の想いに応えることを転生の切っ掛けにしているのだ、と。
いや、待て。
もしも仮にそうだとするなら、今回は誰の『想い』に応えようと‥‥?
思い当たるフシは『ひとつ』しか無い。
やめてくれ‥‥!
そんなつもりじゃ無かったんだ‥‥
幹夫は泣きじゃくる顔を隠すことも出来なかった。
もしも‥‥もしも、自分が「一緒に花火が見たい」と望まなければ、或いは‥‥
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