黄昏に相まみえしは君にして

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そう、『勉強をすれば良い』のだ。何しろ『前例』があるのだから断られることもあるまい。 そうこうして3ヶ月も過ぎる頃に成ると、幹夫もすっかり常連と言えるようになった。何しろ、マスターが世間話をしてくれる程度には、だ。 「学生さん、今日も勉強かい?大変だねぇ」 「あ‥‥はい、どうも。いつも、すいません」 幹夫は苦笑いで返すしかなかった。 『仲良くなりたい』のは、マスターではなく彼女の方なのだから。 「まぁ、ゆっくりしてってよ。ウチの店は朝は早いけど、その代わりに3時には閉めるからさ。だいたいいつも、君が最後のお客だよ」 マスターが言うには地元の『早起き人種』が5時とかの時間にやって来るのだそうだ。この店はそうした人達のために早く開けて、早く閉めているのだという。 そんなある日。 幹夫がいつも通りチェインを出てから講義に行き、机に座った時だった。 「あれ‥‥消しゴムが無い‥‥しまったな‥‥店に忘れてきたか‥‥」 別に大した消しゴムではない。何処にでもあるものだ。 だが、取りに行くのが容易ではない。何しろ1週間に1度程度しか行けない店だから。 別に消しゴムだけ回収しに寄っても良いのだが、何だかバツが悪い気がするし。 「仕方ないな、帰りにコンビニにでも寄るかぁ‥‥」     
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