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甘き誘惑と突然の警告と
次の週、幹夫はいつも通りに『チェイン』に入った。
そして、いつもの席に座ると、いつもように彼女が注文を取りにやってくる。
幹夫は普段と同じように「ホットを‥‥」と言い掛けて、思い留まった。
そう、今日はひとつだけ『いつも通りではない事』があった。
「ホット‥‥チョコレートを‥‥」
少し気恥ずかしい気もするが、何しろ彼女の『オススメ』である以上、無視は出来ない。とりあえずお付き合いはしておかないと。
当の彼女は何事も無かったかのようにカウンターに戻り、幹夫の注文をマスターに伝えた。
「へ?」
マスターがキョトンとしている。
マスターは幹夫の顔を見て「どうせホットコーヒーだ」と決めて掛かっていたものだから、早々にコーヒーを注ぐ準備をしていたのだ。
それが今日になって突然『チョコレート』なんて言う思ってもみないオーダーだったものだから、呆気にとられていたのだ。「何でそんな注文が出るんだ?」と。
が、しかし。
よくよく考えれば、この店にホットのチョコレートが有るという『情報源』は『ひとつ』しかない。そう、彼女だ。そう気がついたマスターはニヤリと、意味深な笑みを浮かべる。
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