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逢瀬を約して焦がれるは
幹夫は混乱していた。
中折帽の男が語った忠告はいったい何だったのか。
『死にたくなければ』というセリフは。
多分、軽い気持ちや脅し半分の意味では無かったと思う。多分、本当の意味で生命の危険があるという意味では無いだろうかと。
しかし、実際のところ今の彼女にそんな『怖い雰囲気』は全く感じられない。
戯けて笑う顔がとても可愛いただの女性だ。何か恐ろしい事をするとか、そんな感じは微塵とてない。
では、何か背後関係が怪しいとか?例えば何か反社会的組織とかの娘とか‥‥いや、だとするとマスターが何か言ってきてもおかしく無いと思う。
「気をつけた方がいいよ?」とか。だが、そんな風にも見えないし。
男の忠告を真に受けるなら、このまま彼女に遭う事を止めることになる。
つまり、チェインにチョコレートを飲みに行くのを金輪際止めることだ。
しかし『それ』だけが彼女との接点であるなら話は別かも知れないが、彼女とは大学が同じで、偶にではあるが顔を合わせる事があるのだ。
そうした折に「最近、来ないわね?」と聞かれでもしたら、返答に窮してしまう。まさか「ヘンな男に止めろと言われたので」とも言えないし。
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