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その告白はあまりに唐突に過ぎて
『やはり』と言えば『やはり』だし。意外と言えば意外だと言えなくもない。
幹夫はデートに現れた清美の出で立ちを見てそう思った。
何しろ彼女は『いつも通りに』黒のメガネに白いマスク、それに薄手のコートの通学仕様だったからだ。とてもこれからデートに向かおうというコーデではない。
ある意味、彼女らしいと言えなくはないが普段通り過ぎるのも何か拍子抜けという気がしないでもない。
何かこう『特別感がない』というか。
もしかしたら彼女は本当に『ただ、贔屓の客をディナーに招待するだけ』が目的なのかも知れないと、幹夫は勘ぐっていた。
だが、それは少し違っていたのだった。
彼女は店で予約席に着席するとコートを取り、メガネとマスクを外した。そして、髪を後ろに束ねる。いつも『ウェイトレス仕様』だ。
コートの下にはそれなりにオシャレで薄手な上着を着ていた。首には細い銀鎖のネックレスも見える。なるほど、一応デートを意識してはいたのだと理解できて幹夫は安心した。ただ、半袖というのが時期外れな気もするが‥‥
「あの‥‥」
店のほのかな明かりに照らされて、彼女は一層に綺麗で儚く見える。
「いい服ですね、それ。よく合ってると思います‥‥けど」
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