黄昏に相まみえしは君にして

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黄昏に相まみえしは君にして

包み隠さず本音を言えば、だ。 『足繁く店に通って、彼女の顔が見たい』 と、幹夫は思っている。 明確に『一目惚れした』とか、そんなにホットな訳でもないのだが、さりとて単にスルーするには心に降りたアンカーが重すぎた。 しかしながら、従前から顔なじみである店なら話は別だが、ある日から突然に頻繁な出入りをすれば『下心』はあからさまだし。 どうにかして自然に通いたいものだと思う。それに、どうも彼女は日中だけに勤務しているようだから、講義(こま)の具合でタイミングが合わない方が多いのだ。 こんな事になるのなら1年の時からサボらずに、もっと熱心に単位を取って於けば良かったと悔やんだが、今となっては後の祭りに他ならず。 結局、あの店に通えるのはせいぜいが週に1回程度という処に落ち着いた。 相変わらず店に客は(まば)らだし、彼女は彼女で特にお愛想を言うでなし、いつも通り「ご注文はお決まりですか?」と会計時の「420円です。ありがとうございました」の二言しか喋らない。 後はいつも通り『自席』でお勉強だ。 幹夫も最初こそ所在がなくて時間を潰すのに苦労したが、2回目からは要領を掴んでいた。     
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