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 高校時代からの付き合いだというサキちゃんとツヨシ。大学から一緒になった自分とは、距離も時間も違いすぎる。アキラがサキちゃんと知り合った頃にはすでに二人は付き合っており、アキラはツヨシと付き合っていないサキちゃんを知らないのだから。  だから嘘をついてサキちゃんの愚痴に付き合うのだ。  二人なら大丈夫だよ。応援しているよ。そんな反吐が出そうな嘘も、ついているうちに上手くなっていった。それに。 「あ、そうだアキラ。ナプキン借りていい?」  サキちゃんからそう言われて、アキラは首を傾げつつ答えた。 「あるよ。なに、きちゃったの?」 「ううん。今日は帰るつもりだったから余分を持ってこなかったの。でもこれ、お泊まりコースだよね」 「まぁそうだね。みんな起きないし」  アキラは苦笑しながら自分達を囲うようにして眠るサークル仲間を見渡した。  みんな年頃の女の子だというのに、だらしなくいびきをかいたりお腹を出したりなんかしている。でもさっきまでみんなとサークルのことや大学、恋愛話に花を咲かせていたのだ。みんな大切な仲間であり、このサークルでサキちゃんと出会えたのだから感謝しないととアキラは思う。  この幸せな空間を自分の気持ちひとつで壊したくない。それはちょっぴり、切なさや悲しみも伴う判断ではあるけれど。 「じゃあ、ちょっとトイレ借りるね」 「うん。いってらっしゃい」     
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