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自分が異常だと他人から思われることも、誰も自分のこの悲しみや痛みを本当にはわかってはくれないことも、きっと全部わかっているのだ。
俺との間を空けようとしたその距離間に、そこに老婆の寂しい孤独な格闘が充満しているように思った。
本当は老婆は狂っているのではなく、”狂わないために”人形の赤ん坊をあやしているんじゃないだろうか。
それが、所詮、悲しい嘘であっても、それで老婆の心に抱えた寂しさやトラウマが癒されているのならば、人形の赤ん坊をあやしていてもいいじゃないか、
と、その場で、俺は距離を取られた癖に、声を大にして主張したくなってしまった。
いつの日か、それが人形の赤ん坊であっても、それを人前で堂々とあやしていても別に恥ずかしがる必要のない時代になったらいいなと思った。
きっとその時には、やたら恵まれてはいるけど、例によって人の気持ちや痛みがわからない、あの幸せだったり偉かったりする人達が、
「”バーチャルな時代の虚妄”という現代の病理」
などとクソ偉そうに言うんだろうが、しかし彼等はそんな人から異常視されるようなことをやっている人が、実は狂っているのではなく、狂わない為にそうしているのだということが全く理解出来ない連中なのだ。
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