第一章 そこで待っている

11/23
前へ
/549ページ
次へ
「しかし、市来君は中々の容姿だね。随分とモテたでしょう」  興梠の事務口調は、まるで経理に睨まれているような雰囲気であった。 よく、俺の会社の経理も、こうやって遠回しに、無駄な金を使っていないのか確認してきた。 「俺はモテません。俺、一つ下の弟がいましてね、それが、まあ、モテるの何のって…… それで、皆、弟に取られるのですよ」  彼女の全ても、弟に取られていた。 そもそも、最初から弟に近付く為に、俺に声を掛けていたのではないのか。 「男は容姿だけではなく、いかに金を稼ぐのかも魅力だからね」  俺を慰めているのか、持論なのかは分からない。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加