第一章 そこで待っている

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「……そんなのは、微々たる金額だね」  突然、後ろから声が聞こえたので、俺は驚いて半纏に抱き着いた。 「ど、どこから来たのですか?」 「押入れでしょう」  押入れと言い切られてしまい、俺は急いで押し入れを開けてみたが、そこには布団が 入っていた。 布団の隙間から天井を叩いてみたが、天井が開くという事もない。 押し入れの下段には箪笥が入っていて、引き出しを開くと男性用の服が入っていた。  反対側の押入れを開いてみても、内容は全く同じであった。 「君、新人なのか。私も、長くここに居る訳ではないけどね。 私は、興梠 泰三(こうろぎ たいぞう)。私は殺されたと思うのだけどね、 記憶がなくてね……困ったものですよ……」  興梠は、会社の経理課長で、誰かの使い込みを見つけ、上に報告しようと階段に走った までは覚えているらしい。
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