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隣で眠る男に、噛み付いてやりたい衝動にかられる。
(幸せそうに眠りやがって)
俺の腰に腕を回し、抱いたまま眠る男。つい数時間前に恋人になれと言われ、何故か流れのまま話しが進み今に至る。
明日は早いので寝ます。
いやいや、勝手すぎるだろ。
なんなんだこの男は。
「あなたは、死にそうな瞬間に快感を得てる。死にたいのではなくて、死にそうな自分が好きなだけです。だからあなたは生きている。それを理解してくれる人間が周りにいなかった。それだけです。」
「そして私も、そんなあなたに快感を覚えた。私も頭の可笑しい人間でしょうね。精神科医をやっていながら…」
俺は一条の言葉がすっと入ってきた。
理解されたかっただけなのか。肇にも。
そしてこの男もまた、世間から理解されず生きてきたのかもしれない。
(だけど、恋人って…)
よく分からない男、一条との生活はまだ始まったばかりだ。
これから先どうなるのか。不安が募るが、とりあえず俺は瞼を閉じた。
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