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狂っている。俺も。ふわりと笑うこの男も。俺と同じでネジが外れている。
後ろを向かずに歩き出す。この男といると飲み込まれそうだ。早歩きで病院から去る。背中に視線を感じながら。
退院を夕方の遅い時間にしてよかった。人が疎らな通りを抜け、寂れた公園のベンチに座る。
これからどうするか。まず家を探さなくては。金は腐るほどある。
今まで住んでた部屋は、退院前に解約した。肇に見つかりたくないからだ。
荷物自体は元々少なく、いつ死んでもいいようにバッグ一つだ。ただ、今の時間不動産屋などやっていない。
今日は最悪、このままここにいるしかない。
「…さみぃ」
流石に夏でも夜は冷え込む。
上着を羽織り膝を抱え込むと、向こうから4人組の男が歩いてくる。
(…やだな。来るなよ)
俺の気持ちとは裏腹に男達は声をかけてくる。
「あれ?お兄さん。どうしたの1人で」
「なになに、こんな所で1人なんて危ないよ」
2人が俺の両脇に座り、肩に手を回してくる。その瞬間、強い耳鳴りと目眩が襲い身体が震える。
「あはは、震えちゃって可愛い」
「おい、あっちの茂み連れてこうぜ」
ぐっと手を捕まれ、茂みに連れていかれそうになる。身体が震えて思うように動かず、声を出したくても唇が震える。
(行きたくない!嫌だ!)
頭を振り抵抗する。その途端、頬を強い力で叩かれた。驚き固まると男達は笑う。大人しくしてれば痛くはしない。そう笑う男の顔がブレる。
(いい子にしてろよ。痛くしないからな。環)
そう言って頬を撫でる親戚の顔が浮かぶ。そうだ。大人しくすれば痛くない。大丈夫。我慢すれば。
「はは、大人しくなった。大丈夫すぐ気持ちよくしてやるから。」
茂みに投げられ男は馬乗りになる。服を破られ、手を縛られる。
身体が震える。吐きそうだ。目からは涙が溢れる。怖い、怖い、怖い。
「あは、泣いちゃって。可愛い」
べろりと涙を舐められる。
俺、このまま犯されるのかな。それならいっそ、早く死んでれば。そんな後悔が頭をいっぱいにする。
「おい、こいつの手首すげぇぞ」
「うわぁ、気持ち悪ぃ。萎えるわぁ」
服を脱がされ俺の手首を見た男達は薄ら笑いをする。手首を捕まれ、爪を立てられる。
「いたっ…」
血が滲む。手首を踏まれる。痛い。焼ける。痛い痛いと口を零せば、いっそう楽しそうに笑う男組。
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